マダラガ科 ホタルガ亜科 Cyclosia macularia (Guerin, 1843)

コレクションシリーズ・昼蛾を買った.

主にマダラガ科とアゲハモドキガ科のEpicopeia属(アゲハモドキが属する)が亜種と分布について詳しく纏められている良図鑑だ.

これで東南アジアで採ってきた昼蛾をバシバシ同定中だ.

そこで,一つ気になった種があった.

 

今回紹介するのは,マダラガ科 ホタルガ亜科 Cyclosia macularia (Guerin, 1843)

Cyclosia macularia

この個体は2014年12月にランカウイ島で採集した.

Cyclosia maculariaは島ごとに以下のように亜種分けされている

  • Cyclosia macularia macularia (マレー半島,スマトラ, ボルネオ)
  • C. m. violetta (シムル島)
  • C. m. purpurea (ニアス島)
  • C. m. metachloros (バリ,ジャワ島)
  • C. m. transita (スラウェシ島)

気になるのは,ランカウイ島の個体はどの亜種に当たるのかということだ.

Cyclosia macularia 亜種分布の略図([1, 2]より作成)

図鑑[1]の絵合わせでいうと,ニアス島のC. m. purpurea(♀)に酷似している.

そもそも,ランカウイ島でこの表現型が安定しているかどうかを調べていると,ランカウイ島で採集された個体が他にも見つかった.

ランカウイ島でC. m. purpureaと思われる個体が2個体採集されていることになる.

しかし,不思議なことにC. m. purpureaの分布するニアス島はランカウイ島と隣接していない.

離れた土地にどうして同じような表現型の個体が生息しているかの解明は,さらなる個体数の調査を必要とするので,このへんでやめにしよう.

 

標本観察

Cyclosia macularia♀ 裏/表

Cyclosia属は,♂は矮小で♀は通常のホタルガ型をしている.

この個体はホタルガ型をしているので♀だろう.

[1]に図示されたpurpureaの特徴は,前翅外縁の白い紋が弱いこと,後翅の黒帯が後翅中腹まで広がることだ.

この個体は,まさにその特徴を捉えている.

翅の裏面外縁には青く光る鱗粉がスポット状に乗っている.

触角は櫛毛状になっている.

触角に雌雄差はないのだろうか?

頭と胸の背面部は翅と同色の緑毛で覆われている.

この個体の写真は腹が黄色いが,毛が剥げてしまったためだ.

本来であれば,同様に緑の毛が生えているところだろう.

一方で,胴体の腹側と脚はホタルガらしく青く光る毛で覆われている.

更に,腹の裏は白と青緑の毛の縞模様になっている.

同個体 裏面 翅棘

翅棘は一本ある.

他のホタルガと同様,口吻があり複眼に毛はない.

下唇鬚も並みといったところか.

この辺は余り特筆するところがないかもしれない.

 

今回は東南アジアの昼蛾の亜種区分について見てみた.

東南アジアのマダラガは見栄えもするし,種も多く実は市場価格もそれほど高くない.

コレクションするには良いのではないか?と思った次第でした.(するとは言っていない)

参考文献

[1] コレクションシリーズ8 昼蛾
[2] http://www.jpmoth.org