ヤガ科 ヨトウガ亜科 Apsarasa sp.(ハグルマヨトウ)

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ハグルマヨトウの仲間は東南アジア~ヒマラヤ、沖縄にかけて生息するヤガ科の蛾だ。

名前の由来は前翅の大半を占める黒いギザギザの模様であろう。

学名のApsarasaは、ヒンズー教の女神か。

分類が混乱していて沢山のシノニムが出来ているが、現在はA. praslini とA. radiansの二種ということになっている。

それらの違いは、背中の白い紋の数と形状[1]なので、今回紹介するのは全てradiansになる。

もっと言えば、A. prasliniはモルッカ諸島に生息する[1]ので、尚更radiansです。

初めて採ったのは石垣島で、数年後マレーシアで灯火採集をして更に複数採った。

よく見るうちに、個体ごとに変異があることに気が付いたので、今回紹介する。


マレーシア キャメロンハイランド 2015.9

まずはマレーシアで採った3個体。

同種のように見えるが、色が橙~硫黄色までグラデーションになっている。

黒い部分は角度で深青色に光り、美しい。

沖縄県石垣島屋良部岳2013.3.16

次に、沖縄県石垣島で採ったA. radians

色は硫黄色で、マレーシアの個体とも共通する。

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しかし、前翅下部のハグルマ模様が、一部異なっている。

マレーシアのものは硫黄色の紋が分かれているのに対し、石垣島のは繋がって一つの大きな紋になっている。

ネット上で沖縄産のハグルマヨトウを探しても、殆どが紋が繋がった個体なので、遺伝的変異が固定されているようだ。

現在同種とされているものについてこれだけ変異が見られるので、そりゃ分類も混乱するわといった印象を受けた。

次の興味は、紋が繋がったタイプがどの地域まで見られるかということで、フィリピンや台湾、中国の個体を持っている方がいらっしゃれば是非見せて頂きたいです。

それでは。

参考文献
[1] Moth of Borneo (http://www.mothsofborneo.com/part-12/amphipyrinae/amphipyrinae_21_1.php)