スラウェシ島 昆虫採集2019 その1

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はじめに

コロナウイルスが猛威を振るい始める半年前。
当たり前のように、年末の海外遠征の行き先はどこにしようか考えていた。
この頃は、数カ月後に新型ウイルスが流行して海外に行けなくなるなんて、想像もしなかった。
遠征の採集品を見返すたび、「本当にこの時期に行って良かったな」と思う。
ガイドの手配、現地の下調べをしてくれた同行者には、この場を借りてお礼を言いたい。

スラウェシ島

別名、セレベス島。ボルネオ島の南東に位置し、島としては世界11位の面積を誇る大きな島だ。
島全体でアルファベットのK状の形をしており、複雑な造山運動によって出来たことを物語る。
ボルネオ島は氷河期の海面降下によって東南アジア半島部と地続きになった一方、
スラウェシ島はボルネオとスラウェシの間のマカッサル海峡が深かったため、氷河期には大陸と繋がらず、オーストラリア区の生物相の影響をうけてきた。
博物学者ウォーレスが東洋区とオーストラリア区を分ける線を、このスラウェシとボルネオの間に引いたことで有名。
そのため、スラウェシ島にはクロザルやバビルサなどの固有種が多く、僕の目当ての昆虫に関しても同様にスラウェシ島特産種が多い。
こういった理由で、生物学の歴史上とても多くの研究がされてきた島で、ヒラタクワガタやオオミノガといった身近な昆虫のタイプ産地になっている。
蝶ではオオルリオビアゲハ(ブルメイアゲハ)やマルスフタオなど、標本即売会で目にする種が多い。
甲虫ではギラファノコギリクワガタやメタリフェルホソアカクワガタなど、人気種も生息。
まさに、虫屋の楽園のような島だ。

2019年12月27日

ジャカルタ・スカルノ・ハッタ国際空港

羽田空港第3ターミナルのラウンジで出発の時を待つ。
羽田から中継地点のジャカルタ・スカルノ・ハッタ国際空港まで7時間45分
空港で一晩過ごして、翌朝スラウェシ島パルにあるムティアラ空港まで国内線で移動する。
ジャカルタ空港にいる間に、両替を済ませプリペイドシムを購入しておく。

翌朝早くにムティアラ空港に到着すると、すぐにガイドのラムリーさんが出迎えてくれた。
ラムリーさんは敬虔なムスリムで、一見強面だが明るく優しい、そしていつの間にか珍品の蝶を捕まえている実力者だ。
息子のアリくんはムスリムの学校に通う高校生で、冬休みを利用して僕らの採集に同行してくれた。
ガイドはもう一人、ジェフリーさんという方が同行した。
この中で英語を話せるのはジェフリーさんのみだが、コミュニケーションはGoogle翻訳や「旅の指差し会話帳インドネシア編」を使って会話ができたので不便はなかった。

ホテルに荷物を置いて、すぐに採集地へ向かう。
パルの町から出ると、辺りは非常に乾燥した疎林になっていた。
乾燥して蝶が少ないかと思いきや、採集地に近づくにつれ車から見える蝶がどんどん増えていく。
ガイドに「あれはなんだ?」と尋ねると「Appias(シロチョウの仲間)」という。

オオアサギシロチョウ

車を降りて採集開始。
まず最初に採ったのは、オオアサギシロチョウ Pareronia tritaea。
大陸に生息するアサギシロチョウ Pareronia valeriaが巨大化したような蝶で、スラウェシにはこのように他の地域より蝶が大きくなる傾向がみられる。

採集地の様子(初日とは別の場所)

採集地は涸れ川のような場所で、そこに蝶が集まっている印象だった。

この場所での優先種はマダラチョウの仲間で、4~5種類くらいが混じっているようだった。
ひたすらマダラチョウを採りながら道を進んでいく。
すると、アオネアゲハが上流から素早く飛んできた。
「あれ!カラスアゲハ!!」
素早く飛ぶそれを、同行者が走ってキャッチ。

アオネアゲハ スラウェシ島亜種 Papilio peranthus adamantius
インドネシアに広く生息するが、島ごとに亜種が異なる。
初めは頑張って採集していたが、遠征中どこへ行っても目撃したので、おそらく普通種のようだ。

ビトレアヒメゴマダラ(左)とアオネアゲハ(右)

スラウェシ島は毒蝶とそれに擬態した無毒の蝶が多い。
左側に写っているビトレアヒメゴマダラ Ideopsis vitreaは有毒の蝶で、コレに擬態する無毒のインケルタダマシヒカゲ Zetera incertaが同島に生息している。
どちらも滞在中に目撃したが、飛んでいる姿は本当によく似ていて、後翅の黄色い色がチラついて警戒色になっているようだ。

その後も虫を追加。ウォーレス線を越えたとはいえ、東洋区の昆虫も少なくない印象。
木の根元に隠れているトモエガの仲間が多く、僕はこれが嬉しかった。

つづく