フシキキシタバ Catocala separans Leech, [1889]

2015/5/31 東京都小平市 ♂個体

同個体

Catocala separansはロシア, 韓国, 日本に分布していて[1], 都市近郊の雑木林で近年次々と生息地が確認されている.
東京近郊の雑木林では, 5月下旬から成虫が羽化し, 同じ雑木林に産するマメキシタバやコシロシタバよりも少し早めに出現する.
そのため, 5月下旬には雑木林がフシキキシタバだらけになっているのが観察できる.
一昔前はかなり珍しい蛾だったらしいが, 今では普通種となった.
なぜ生息地が増えたのか, いずれ調査してみたい.

2015/5/31 東京都小平市

2015/5/31 東京都小平市

樹液に来たCatocalaは生態写真が撮りやすいのでとても良い.

2015/5/31 東京都小平市

フシキキシタバの♂が大量に樹液に集まる中, 羽化した直後の♀個体を発見した.

2015/5/31 東京都小平市

暫くすると翅が伸びてきたが, この段階ではまだ翅が柔らかく飛べない.
大抵の蛾は, ♀が♂より遅れて羽化するため, この日あたりで♀が続々と羽化し出したのだろう.

標本観察

2015/5/31 東京都小平市 ♂

原色図鑑によれば, シタバガ亜科(Catocalinae)は「複眼には毛がなく, またその周辺にも毛がない。下唇髭第3節はよく発達し長い。」[2]とあるので見てみた.
複眼周りの毛は確かに見られない.
下唇鬚第3節は, 恐らく図示したものだろうが, 思っていたほど長くはなかったが, 他と比べると比較的長い部類なのだろう.
ちなみに, 下唇鬚についてはこのサイトが詳しい.
http://www.pteron-world.com/topics/anatomy/seichu/head2.html

2015/5/31 東京都小平市 ♀

この♀は若干羽化不全な個体なので, 翅形の際はあまりあてにならないが, 腹部の先端が♂個体とは明確に異なることが分かるだろう.
♂個体は腹部先端が毛筆のようになっており, ♀はすぼまっている.

2015/5/31 東京都小平市 ♂個体

2015/5/31 東京都小平市 ♀個体

翅棘について, ♂は太いのに対し♀は細い翅棘が一本見られた.
種によっては, ♀の翅棘が複数本あったりするのだが, 他のCatocalaはどうなのだろうか.

参考文献
[1]http://www.jpmoth.org/~dmoth/80_Noctuidae/09Catocalinae/4179%20Catocala%20separans/Catocala%20separans.htm
[2]原色日本蛾類図鑑下 p.156