アズミキシタバ Catocala koreana Staudinger, 1892 今回紹介するのは,アズミキシタバというカトカラの一種だ 日本で知られるアズミキシタバの産地は,数年前まで長野県白馬村と新潟県奥只見の二箇所しかなかった ところが2017年,2018年にそれぞれ群馬県土合[1]と長野県伊那谷[2]での採集が報告された 食草はバラ科シモツケ属のイワシモツケで,石灰岩質の山へ行けばそこまで珍しいわけでもない ほぼ同じ食草をホストとするナマリキシタバは,珍品ではあるが日本各地に生息している 今後アズミキシタバの新産地が発見されていくのだろう [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”] [/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”] [/wc_column] [/wc_row] [wc_row] [wc_column size=”one-half” position=”first”] [/wc_column] [wc_column size=”one-half” position=”last”] [/wc_column] [/wc_row] ナマリキシタバ(長野県白馬村 2016.07.19) これらの個体はすべて長野県白馬村で採集したもので,一晩に10匹程度飛来した 採集した個体はほとんどが♂で,深夜1時ごろだった 生息地は険しい谷で,その斜面にイワシモツケが生えている 丁度花の時期で,白い小さな花が咲いていた アズミキシタバが夜な夜な吸蜜に訪れるのだろうか アズミキシタバの生息する谷 標本観察 左がキシタバ,右がアズミキシタバ アズミキシタバの最大の特徴は,日本のカトカラの中で最も小型なことだ 後翅の模様も特徴的で,同じバラ科食いのハイモンキシタバに似ている 複眼は無毛で,下唇鬚は発達しよく目立つ 小型ながら,顔つきはしっかりカトカラだ 裏面 この大きく発達した下唇鬚は,口吻同様に動かすことができる 複眼を掃除するワイパーのような機能だろうか カトカラなど一部の蛾には,腹部基部に大きな穴が空いている これは鼓膜器といい,多くの鱗翅目にあるものだが,ヤガ科とシャクガ科の一部でよく発達している カトカラは灯火に飛来する直前,よくコウモリに捕食される コウモリの捕食を逃れるために,このような鼓膜器を発達させてきたのだろう カトカラの脚は上写真のような棘が無数に生えている これは脚の下側にしか生えていない 爪だけでなく,このような棘のおかげで,木に引っかかって留まることができるのだろう 今回観察した個体はすべて長野県白馬村で採れたものだった 今後,奥只見や他の産地で採れた個体を手に入れ次第,比較してみたい 参考文献 [1]https://www.jstage.jst.go.jp/article/yadoriga/2017/252/2017_51_1/_article/-char/ja/ [2]「蛾類通信」No. 286(2018年7月発行)間野隆裕 アズミキシタバを伊那谷で採集 273 [3] 原色蛾類図鑑上 [4] 原色蛾類図鑑下
アズミキシタバ Catocala koreana Staudinger, 1892
今回紹介するのは,アズミキシタバというカトカラの一種だ
日本で知られるアズミキシタバの産地は,数年前まで長野県白馬村と新潟県奥只見の二箇所しかなかった
ところが2017年,2018年にそれぞれ群馬県土合[1]と長野県伊那谷[2]での採集が報告された
食草はバラ科シモツケ属のイワシモツケで,石灰岩質の山へ行けばそこまで珍しいわけでもない
ほぼ同じ食草をホストとするナマリキシタバは,珍品ではあるが日本各地に生息している
今後アズミキシタバの新産地が発見されていくのだろう
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ナマリキシタバ(長野県白馬村 2016.07.19)
これらの個体はすべて長野県白馬村で採集したもので,一晩に10匹程度飛来した
採集した個体はほとんどが♂で,深夜1時ごろだった
生息地は険しい谷で,その斜面にイワシモツケが生えている
丁度花の時期で,白い小さな花が咲いていた
アズミキシタバが夜な夜な吸蜜に訪れるのだろうか
アズミキシタバの生息する谷
標本観察
左がキシタバ,右がアズミキシタバ
アズミキシタバの最大の特徴は,日本のカトカラの中で最も小型なことだ
後翅の模様も特徴的で,同じバラ科食いのハイモンキシタバに似ている
複眼は無毛で,下唇鬚は発達しよく目立つ
小型ながら,顔つきはしっかりカトカラだ
裏面
この大きく発達した下唇鬚は,口吻同様に動かすことができる
複眼を掃除するワイパーのような機能だろうか
カトカラなど一部の蛾には,腹部基部に大きな穴が空いている
これは鼓膜器といい,多くの鱗翅目にあるものだが,ヤガ科とシャクガ科の一部でよく発達している
カトカラは灯火に飛来する直前,よくコウモリに捕食される
コウモリの捕食を逃れるために,このような鼓膜器を発達させてきたのだろう
カトカラの脚は上写真のような棘が無数に生えている
これは脚の下側にしか生えていない
爪だけでなく,このような棘のおかげで,木に引っかかって留まることができるのだろう
今回観察した個体はすべて長野県白馬村で採れたものだった
今後,奥只見や他の産地で採れた個体を手に入れ次第,比較してみたい
参考文献
[1]https://www.jstage.jst.go.jp/article/yadoriga/2017/252/2017_51_1/_article/-char/ja/
[2]「蛾類通信」No. 286(2018年7月発行)間野隆裕 アズミキシタバを伊那谷で採集 273
[3] 原色蛾類図鑑上
[4] 原色蛾類図鑑下