アトモンミズメイガ Nymphicula saigusai Yoshiyasu, 1980

2016. 8. 5 静岡県伊東市


 アトモンミズメイガ Nymphicula saigusai Yoshiyasu, 1980はミズメイガ亜科の一種で, 開翅長13mm程度の小蛾だ.
昔は東南アジアに広く生息するN. blandialis(WALKER)として知られていたが, Yoshiyasu[1]によって別種に分けられた.
ちなみにこの論文で, 同時に日本のNymphicula属は4種に分けられた.
同属の他の種は主に四国・九州, 琉球列島で分化していて, この種は最も北まで分布している.

 この論文に加えて, ミズメイガ亜科の分類をまとめた論文(A Systematic Study of the Nymphulinae and the Musotiminae of Japan. Yoshiyasu, 1985)がCiNiiで公開されている.
英語だが内容は詳しく網羅的に纏まっていて, 「これが誰でも無料で読めるなんて…」となること間違いない.
是非, この論文片手にミズメイガを集めましょう.

 ミズメイガには幼生期を水中で過ごすものもあるが, この種は陸生で, 山の切通しの斜面に生えるツボミゴケJungermannia truncata NEES や蘚類を食草とする.
この属の幼虫は円筒状のポータブルケースを作り, 種によって形状が異なるようだ. [1]
幼虫を持って帰って飼育するのが簡単そうなので, 是非一度探してみたい.
生息地は広く, 北海道, 本州, 四国, 九州各地で採集例がある. [2]
平地の灯火で採られるが, 一度に多くは飛来しないらしい.

標本観察

特徴は名前の由来にもなっている, 後翅の4つの紋だ.
光沢のある白地に黄色い模様が入る.
蛾屋的にはかなーり美しいと感じる部類だと思うが, 果たして一般人はこれを綺麗と思ってくれるのか.

裏面

同個体


同個体


あんまり言うことがない.
表と色はあまり変わらない.
腹部の形状的になんとなく雄っぽい(自信はない).

下唇鬚

同個体


原色図鑑[3]によると, 他のミズメイガと違って下唇鬚が細長くのびているのも特徴らしい.
確かに, 図説の通り細長い.

同じページには、「この亜科はノメイガ亜科とよく似るが真の差別点は交尾器によるより方法がない. 」とあって, ノメイガ分類の闇を感じられる.
(確かにミズメイガっぽいノメイガいるよね)

論文も見つけたことだし, 今年は生態的にも見た目的にも魅力的なこの蛾を狙って集めてみたいなあと思う今日この頃でした.

参考文献
[1]蝶と蛾 31(1,2), 1-28, 1980-08-20
[2]http://www.jpmoth.org/~dmoth/63_Crambidae/6106_Nymphulinae/61060701_Nymphicula_saigusai_1825/Nymphicula_saigusai.htm
[3]原色日本蛾類図鑑上