虫採り動画上げてます!!
普段の虫採りそのまんまの様子をお届け中!
2016年も秋
本州の昆虫のシーズンは7月に最盛期を迎え,8月になれば下り坂。お盆を過ぎれば大抵の昆虫は姿を消す。しかし,夏の暑さも過ぎ去った秋に,ようやく姿を見せる昆虫がいる。ちょうどそんな時期,山形に用事ができた。
「山形まで来ておいて,ただ用事を済ませて帰るのはもったいない」
こんな風に思うのは,虫屋の性かもしれない。そんなわけで,灯火採集セットを持って山形へ向かった。
9月9日
新幹線を山形駅で降りる。東京と違い,秋がすぐそこに来ているのを肌で感じた。見るとすぐそこに奥羽山脈。山が近くにあるのが,羨ましかった。用事を済ませ,レンタカーで30分も走らせれば蔵王高原。あたりは既に暗くなっていた。
予めGoogle Mapで目星をつけておいた展望台近くで車を止める。しかし,車で展望台にはいけないようだ。標高を上げれば山頂の展望台もあるだろうが,そこは特別保護地区.採集はできない。仕方なく,道沿いでふさわしい場所を探していると,運よく待避所を見つけた。そこに車を止めて,灯火採集スタンバイ!
初めてすぐに,ブナ帯の常連が現れた。
東北の9月は気温が低い。そのため,蛾の集まりは悪い。目当ての蛾がくるまで,じっと待つ。
点灯して1時間ほどたっただろうか。上空を大きな蛾が飛んでいるのが見えた。
「来たか…」
大きな蛾は地面に墜落するように着地した。
目当てはお前じゃない。だが,こいつがいるってことは,目当てがいても不思議ではない。そう思えば,寒空の下でも待つ気力が湧く。
そしてシロシタバの飛来が収まった22時半過ぎ…
シロシタバと同じくらいの大きさの蛾が遠くを横切るのが見えた。
きっと目当ての奴だ
蛾は光に呼び寄せられるので,遠くにいても向こうから近づいてくるはず。
そして,再び地面に大きな蛾が止まった。
後翅の青く光る帯が眩しく光った。
やった!!
結局この晩は3匹のムラサキシタバを採集することができた。数年間憧れだった蛾が,一晩にして3匹も採れたのだ。喜びもつかの間,白幕の上にいぶし銀のような美しさのナミシャクが止まっているのが見えた。
調べてみると,同属(Dysstroma)にはアルプスナカジロナミシャクという高山蛾がいるらしい。ナミシャクも奥が深い。そう思わされる蛾だった。
9月10日
実は山形から帰った翌日にも灯火採集の予定があった。今度は一人ではなく,友人とその弟を連れて,長野の伊那谷へ向かう。実は伊那谷は今年三度目だ.頭がおかしい。
伊那谷は石灰岩地にクビジロツメヨトウとナマリキシタバが生息する。どちらもまだ採ったことがない。8月30日の記録があるので,9月初めならまだ間に合うはず。そんなわけで,南アルプス登山道のゲート手前で灯火採集を始める。
(2019.06.02訂正、追記)
「写真の蛾はトチュウウスクモヨトウでは」とのご指摘がありました。杜仲の葉の害虫で、つい最近日本に移入してきたそうです。2017年4月に長野県で成虫が採集されているようですが、これはそれよりも前の記録ということになります。
こちらでも蛾の集まりは悪かった。結局,目当ての蛾は来ず朝を迎えた。
9月11日
せっかく長野に来たのだから,いい虫を採って帰らねばなるまい。そこで前から気になっていた梓川のミヤマシジミを見に行くことにした。
ひと目でいい河川敷だと分かった。護岸は土手になっていて工事されたようだが,河川敷は河原の石が多く敷き詰められ,河川の植物がまばらに生えている。例えば多摩川下流の,人の手が入りすぎた河川敷とは大違いだった.自然度の高さを表すかのように,河川を歩いているとカワラバッタが目についた。
石に紛れる姿をしているが,翅は目が覚めるような青色をしている。止まった場所で見失ってしまうので,捕まえるのは難易度が高い。植物が茂っているところに行けば,ツバメシジミに混じってミヤマシジミが飛び出す。食草のツメレンゲが生えている周辺に行けば,クロツバメシジミも混じってくる。採集したのはわずか2時間ほどだったが,長野県を満喫した気分になれた。
山形~長野と大移動だったが,とても充実した3日間でした.